# 6
何故、一万七千円なのか。
急遽、彼の上京が決まり、パッケージツアーで取った帰りの航空チケットを捨てて、4時間はやい別便で帰る為に支払った金額。
展望台まで昇るつもりだったが、30分待ちと聞いて断念。
「水族館行こう。」
水族館の中も人でいっぱいだ。しかも狭い。
彼は興味ないと思っていたのに、何故水族館に行こうなんて言ったんだろう。
こちらも展望台まで登ろうと思っていたが、人が多い為、断念。
「水族館行こうよ!」
「もう行ったじゃん。水族館てあれじゃないん。」
事前にお奨め観光スポットを訊かれたとき、「私はまだ行ったことないから、東京タワーの水族館に行ってみたいけど。」とメールしたの、ツリーのと混同してたらしい。なんといっても今回は、彼の初の上京。
それで、水族館行こうって言ったのか。
ほんとうに可愛い。
病院の待ち合いみたいな椅子が良い味出している。
奥に和風な鯉の池(室内なのに)があり、鯉が飛び跳ねて床は水浸しになっていた。
外は人でいっぱいなのに、館内は私と同行者のふたりだけ。最高だ。
キスするところは見られなかったけれど、千切れた葉っぱをつんつんしてた。敵と間違ってるのかな。
どこが可愛いって、顔を寄せてけんめいに覗き込んでいたら、寄って来てくれたこと。
最初は水槽の向こうの隅っこに折り重なるようにじっとしていたのに。
胸鰭でスキップするみたいに近寄ってくる。
餌か飼育員さんと間違えられているのかな。
夜ご飯は品川のつばめグリル。
ハンバーグに焼きじゃがいもがついていて、それに葉っぱが添えられてて、芽が出たみたいな装飾が可愛い。
彼は、木のプレートの取っ手の部分にナイフとフォークを置いていた。
ナプキンの使い方を知らなくて、「落ちないようにかけるんよ」と教えたら、折らないまま胸から掛けていたので、楽しくなってしまった。
東京って、何食べても味気ない。
そう思っていたのに、とても美味しく感じた。
一万七千円の四時間は、
とってもとっても素敵な時間だった。
好きじゃない東京の街でも、大好きな人と過ごす時間は、こんなにも美しい。