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微妙ほどではない作品

個人の感想です。

個人的に好みの話は別の記事に記載。
塚のファンという程ではない一般人なので、ファンの方には不快な内容が含まれる恐れがある為、閲覧注意です。

エリザベート/夢の浮橋

エリザベート

人気の演目なんだろうけど、どこが面白いのかがわからなかった。
どこが悪いとかじゃなく、楽しみ方がわからない。
最後まで観て、だから何?としか思えなかった。

歌がとにかく多い。
セリフがめちゃ少ない。
衣裳、美術も綺麗。
滝のように降るスモーク。
演者も下手と気になる人はいない。
古さを感じない。
作品の完成度は確かに高いと感じる。

でも、どこが面白いのだろうか。
それがわからない。
淡々とエリザベートの生涯を見せられる。
それを延々解説するルキーニ。
そこにちょいちょい登場するトート。
何を見せられているんだろう。

エリザベートは女だし、この時代だからしょうがないんだろうけど、何かを成し遂げたかというと特に何もしていない。
あと、エリザベートも一応貴族の娘なら、貴族は所領(領民)を守る義務があるっていう話くらい教育しとけよ。庶民の娘じゃないんでしょ?自己顕示欲と承認欲求の塊で国民まじ空気。

ひたすらミルク風呂に入り、卵とオレンジだけ食べ、器械体操をして、各国の美女の写真を集めて白雪姫ごっこして、旅行や病院の慰問に勤しむ。
観たこと無い人からしたら何言ってるかわからないと思うけど、これがエリザベートのストーリー。
ヤマとかオチとか意味はどこ。

トート、カフェでお茶したり、死の割に人間社会に溶け込んでいる様がシュール。
やあ、久し振り!とか一般人に普通に声掛けられている。
国王、あれだけ王は国民の為に~って帝王学語ってたのに、デリバリーで健康になっちゃうんだ。据え膳食わぬは男の恥ってやつ?笑
元々、政治とプライベートは別!君も愛人ほしければどうぞ~くらいのテンションなら別に良かったけど、国民優先だから君に苦労はさせるけどわかってくれ!って言ったならそれは貫けよ。
すみれコード的な婉曲表現なんだろうけど、どぎつい姿で登場する商売女の皆さん。
めちゃくちゃあっさり寿命を迎える敵役(姑)。

ルキーニ、"煉獄"と言われてたから、現実世界じゃないのかな、と思ったら、最後、時間だ!って言われてて、時間という概念が死後の世界にあるとは思えないから、じゃあ現実世界?と巻き起こるミルクボーイ論争。
トート、あれだけ、自分を愛してくれないならまだ死なせない!いつか死を愛する時が来る!みたいに言ってたのに、結局無関係の知らない人(ルキーニ)があっさり殺してるの何なの。
あの壮大な前振りは何だったの。

テロリスト(ルキーニ)の支離滅裂な妄想っていうのが、最もすっきりする解釈なんだけど、要するに夢オチかい!
散々他人の炭水化物抜きダイエットとか見せられて夢オチて。酷すぎん。

結局歌が多用されていてセリフが少ないから、キャラ全部がふわっとして、何も残らないのかな。
どういうテンションで観るのが正解だったのかわからない。
エリザベートの生涯っていう大河もの…にしては、中身の無い人生(描き方が)だし。劇的に描いてあればそういう楽しみ方なんだってなるけど。全てにおいてふわっとしている。王子様と結婚したのもイケメンだったからくらいにしか見えないし、王子様も美少女だから選んだとしか見えない。これだったら当て馬役の姉要らんくね。全部のエピソードが平板で弱い。
劇的に描こうとすれば描ける題材だと思うのだけど、トートを立たせる為に、多分全てのエピソードを薄くしているんだよね?それはそれで良いのだけど、その割にトートも薄い。息子の葬式場面で友引してれば腑に落ちてたけど、そこは敢えてスルーし、じゃあもっと盛り上がる場面が来るのかと思えば、寿命ぎりぎりぐらいまで引っ張った挙げ句、最後知らない人(ルキーニ)出てくるし。結局お前誰だよ。

総合すると、ルキーニという一犯罪者の妄想を写実的に描いた作品という印象。ルキーニは一般人でエリザベートのことたいして知らないし興味も無いから、全てのエピソードが薄いのだ。そんなリアリティ要らん。

ハンガリー人の役の和央ようかさん、イケメンが光っていた。大した役ではないのだけど。後のカラフよね?ああ、これはトップとるわ、って感じた。

何かがダメとかではなく、強い感情を抱いて行動するキャラがいないから、どこを軸に観れば良いのかわからない。ひたすら外部からの力で現状変更が起こるだけ。
現実はまあそうかもしれないけど、そんなリアリティ要らん。
こうしたいっていうキャラの意思→行動→結果、って流れがあってはじめて、観ている人は結果に意味を見出だすのだと思うけど。この作品は、事実→事実→事実ってひたすらそれだけ。誰も何も行動しない。ルキーニは行動したけど、特に動機は無かった。唯一エリザベートの息子は一応動機があって行動しているけど、何をやったかふわっとしているし、結局メインの流れに絡まないし。

どうして人気の演目なのだろう。何か特別な観方があるのだろうか。
宝塚的には、トップの絡みなのか?けど、そういう観方をするには、ファントム以上に絡みは薄い。

夢の浮橋

何か舞台の上真っ暗すぎん?降ってくる謎のスモーク。
あと、原作はほぼ関係無い。
やたらいちゃいちゃしてる主人公とライバル。杓でチャンバラすな(笑)
一般人は儀式の舞姫なんか出来んやろ。
時代考証とかそういうのを求めて観る作品ではない。イマジナリー平安時代

ヒロインやばすぎん。いくら田舎出身とはいえ、この時代に知らん男と普通に会話するとか無理ある。(すみれコード的に、知らない男と寝てはいけないからしょうがなかったんだろうけど。)

ストーリーとか余計なこと気にせずに観る作品という感じ。
歌の使い所とか、キャラの出し方とかは巧いなーと思う。キャラが多い。
歌の使い所は良いけど、主題歌みたいな残る歌が無い気がする。
セット綺麗。
衣裳可愛い。

ファンタジー(傀儡)場面、謎の金田一みたいなBGM。
このシーン必要?
関係ないキャラのシーンが多すぎてヒロイン空気。

まず形代って、呪術的な意味での"身代り"であって、"人形"とは違うよ。魂のレベルの話であって、物質的なモノの話ではない。文化に対する理解が浅く感じる。

そもそも、光源氏は、占いの結果臣下に降ろさないと国に災いがあるとのことで臣籍降下されたのであって、その源氏が傀儡だというなら、東宮(天皇を継ぐ)かどうかって関係無くね。光源氏は母親の家格も低かったし、生まれてこのかた東宮じゃなかったんだから。
光源氏が傀儡っていう発想は、平安時代…というか源氏物語の世界観わかってないから出てくるのでは。もし傀儡でしかないなら、政争に巻き込まれて明石行ったの何って感じだし。
平安時代の人間は、前世の因縁とか二世の契りとかが現実に存在しているという感覚で生きてるのだから、人間社会レベルでの傀儡って考えは無いでしょ。だったら占いで臣籍降下決めんやろ。次元が低いんよ。まず源氏物語自体が石山寺で降りてきた話なんだし。
現代人の理解できる範囲の(現実的な)話にしたかったのかもだけど、スケールダウンで薄っぺらく感じる。

主人公は、中の君妊娠させて嫁にしているのになかったことにされている。
その上で大君の話めちゃしてて、原作知ってたら、サイコ野郎にしか見えない。
中の君が妊娠させられた心労で死んだとこあるのに。
他人の家を自由に彷徨いて女を寝取る。
少なくとも、そんな男に夢中になる女は、男の趣味が悪すぎる。
(そもそも、会う=結婚の時代で、女が人間性で男を選ぶのは基本手紙を通してだから、宝塚でいう恋愛は成立しないから、難しいのはわかるけど。)

あと、女三宮は完全に被害者で柏木には塩だった(そもそも柏木は最初の一発で命中させている)のに、風評被害。帰ろうとする夫を引き留めて泊まらせたから、見たくなくて放置してた柏木の手紙を拾われてバレたのだし。

歌や演技が酷いと思う演者はいなくて普通に見られる。
全体的には、作品としては、美術・音楽面が大幅加点して、内容は特に無いけど総合評価で良作の不思議な作品。

ストーリーが全然入ってこない。
原作とか平安時代知らない人なら普通に観られるのだろうか。
何故原作に沿ったシンプルな話ではいけなかったのか。
まあ現代の道徳にそぐわないから難しいのだろうけど。

普通に大君、中の君の話書いてからの浮舟じゃないと意味わからないし、あと浮舟はどっちつかずでふらふらしてるから"浮舟"なのであって、アイデンティティ無くなるキャラ改変は流石にやってはいけないのでは。
薫・匂宮の二択→どっちもお断りだ!で出家という第三の選択肢を選ぶところに意味があるのであって。
原作では、そこで初めて自分の意思で選択して、"浮舟"というアイデンティティを喪失して退場という流れ。
そもそも、どっちかが好きだからって手段として仏門に入るのは、真面目に修行している人達に失礼だ。

美術は良いだけに、まともに原作を再現したのを見たかった。惜しい作品。